チケットについて

チケット予約は終了させていただきました。以降は当日券のみの取り扱いとなります。当日券は、開演の1時間前から劇場のロビーにて発売いたします。

アフタートークのお知らせ

下記日程、アフタートークを開催致します。

26日(水)19:00開演 内野儀氏
27日(木)19:00開演 三浦大輔氏(ポツドール)
28日(金)19:00開演 若松武史氏
29日(土)19:00開演 鈴木慶一氏(ムーンライダース)

21:20〜50を予定しております。本公演のチケットをお持ちの方は、ご観劇日前でも後でも半券をお持ち頂ければお入りになれます。当日のお席の埋まり具合によってはお立見になることもございますので、予めご了承ください。

当日は21:00からロビーにお入りになれます。終演後、受付でチケットをご確認の上、ご入場して頂きます。申し訳ございませんが、お電話でのお問い合わせはご遠慮くださいませ。

 そこではとても美しい生活が約束されている。いま若い夫婦が不動産業者に案内されてこのニュータウンに来た。

 たしかにそこはとてもいい街だ。安全な生活に住民は満足しているし、幸福感に充たされ、清潔に計画された土地で人々は快適な暮らしを送っている。そして、住民たちだけではなく、この国の誰もが記憶している「ニュータウンのある事件」がテレビで報道されても、住民たちにとっては見知らぬ土地の特別な出来事に過ぎなかった。自分の幸福とは関係がない。テレビのワイドショーで語られる程度の遠い物語だ。

 なにもゆがみはない。生活に暗さはない。明るく計画された住区だ。合理的に造成された街路や、街路を装飾する樹木は、町に潤いをあたえる。新聞の折り込み広告にあるような、様々な種類の情報として流される、嘘のように飾られた住宅の絵や映像が、その町ではまさに実現しているようだった。住民はその土地を愛していた。これはニュータウンの住民たちによる、ニュータウン礼賛の物語だ。

 若い夫婦はそこに土地を買うのだろうか。

 ただ彼らが知らないのは、この宅地の下にある地層にこめられた歴史だっただろう。幸福感と礼賛に埋め尽くされた物語が忘れているのは、地層にこめられた歴史だ。一見すると、あらたに計画され造成された土地には歴史がないかのように見えるが、それというのも、住民たちにとってそもそもそこがどんな土地だったかという想像はまったくないからだ。かつてそこは森だった。森には動物もいたかもしれないが、もっと特別な力が棲んでいた。森から流れていたというあの風はいまどこに封じ込められてしまったのだろう。人を揺り動かすあの神秘的な力は。

 ニュータウンの開発で土地が掘り返されたとき、土のなかから封じ込められたものが人々の前に姿を現す。

 美しく計画されるはずの土地から小さな石が見つかる。

 土に蓄積された歴史と、太古からの時間が、その石には封じ込められている。石が見つめてきた時間はどんな姿をしていただろう。石の放つ奇妙な力によって人々の生活は少しずつ、そしてゆっくりゆがんでゆくが、若い夫婦にはそれがわからない。住民たちも気づかない。自分たちの生活の危うさを石が語りだそうとしていることなど誰も知らない。けれど誰もが幸福だ。気づかないことによって幸福だ。幸福はいつまでも続くと誰もが信じて疑わなかった。

 だが、それに最初に気がつくのは子供たちだ。石の力に素早く感応し、過去からの声に耳を澄ます。若い夫婦にはその声が届かない。ニュータウンは礼賛されるべきだ。つまらない否定や悲観などここでは語るに値しない。だから夫婦は決意する。

 私はいかにして心配するのをやめニュータウンを愛し土地の購入を決めたか。

 けれど、石の奇妙な力によってあきらかになる土地の本来の姿を見つめるとき、現在と過去、未来と太古、時間が織りなす物語が、石を通じてここから動き出す。