May.31  「働く月末」

■朝から一年生の「舞台基礎」。午後から二年生中心の「舞台表現」。昼の休憩時間も学生が研究室に来て打ち合わせをしたので食事をするひまがない。授業が終わってから「発表公演」のある春秋座の責任者の方と打ち合わせ。夕方からあらためて稽古。「舞台表現」の「リーディング一般公開」のための稽古をする。少し「読み」がよくなってきた者もいて、ようやくおぼろげながら形になってきた。
■稽古のあとスタッフたち、といってもみな俳優を兼ねているが、集まってきていくつも質問され、学校を出たのは八時近く。
■家に戻ってすぐ原稿を書こうと思ったが眠い。テレビではフランスとセネガル戦が中継されていたが眠くて見る余裕もない。眼が覚めたのは12時近く。原稿を書かなければいけない。しかし眠い。眠ったのにまだ眠い。からだがだるい。ひどく疲れているらしい。

(4:07 Jun.1 2002)


May.30  「授業と届いたもの」

■午前中は、舞台表現の授業があり、リーディング一般公開のための動きを決める作業をする。
■動きを決めるのは必要だが、読みがまだだめじゃないか。
■午後家に戻ると、もう『ジャン・ジュネ全集』が届いてうれしかったが、メールチェックしたら原稿の催促が来ていた。だめだ。時間がない。急遽、夕方からの稽古は自主稽古にしてもらった。で、書けずに苦しむ。京大のS君から「青山真治さんと大澤真幸さんのシンポジュウム」に誘われていたがそれにも行けず、「青山真治さんからの伝言」というタイトルのメールをもらった。どうやら青山さんはラジカル時代の僕の舞台をよく見ていたらしい。うれしかった。だから書く訳じゃないが、青山監督の『ユリイカ』はすごくよかった。
■それにしても原稿である。書けない。あしたは朝から一日中授業。崖っぷちである。

(1:25 may.31 2002)


May.29  「休む」

■たまたま、Fさん、Sさんという未知の方から戯曲を読んだというメールをもらう。来年の公演に向けて戯曲のことを考える。このところ小説のことばかり考えていたが新しい戯曲についてモチベーションってやつが高まっている。なにか新しい方向が見いだせそうな気がしてきた。
■それにしても疲れたのだ。
■一日休む。寝てばかりいた。
■本を読もうと思いつつゆっくり休む。

(1:04 may.30 2002)


May.28  「現実へ」

■朝から授業があっていきなり現実に引き戻される。
■一年生の舞台基礎。Dクラスの最後の授業だった。授業のあと二年生たちの「舞台表現」の発表に向けて打ち合わせをする。六月五日、六日に予定されているリーディング、七月の発表公演のある春秋座のスケジュールなどいろいろ問題があり学生も僕もただあたふたする。授業の部屋が変わっても、studio21が使えなくても、「いいですよいいですよ」と人のいいところを見せてしまった自分がばかに感じる。
■午後、学校からバスに乗って京都府立図書館に行くが図書の整理のため閉館中だった。府立図書館とはどうも縁がない。
■ジャン・ジュネの『屏風』という戯曲を読もうとネットで検索したところ三軒茶屋の古本屋に『ジャン・ジュネ全集』が揃いであるのを見つけた。世田谷パブリックシアターの近くの古本屋だ。フランスですっかりお世話になったパブリックシアターのIさんにこの際だからさらにお世話になろうかと図々しいことを考えたが、べつの古本屋に少しだけ安く出ていたのでそちらにメールで注文した。
■からだの調子が悪い。疲れている。とにかくパリでのんびりする時間がほとんどなかった。昼間はポンピドゥーセンターやオルセー美術館など見たい場所を回ってやたら歩き、夜は舞台を見るというめまぐるしい日々だ。一年でもいいからパリに住めばゆっくりいろいろ見られるだろう。パリ最後の夜は『ダンカンの死』をオデオン座で見たあと食事をしセーヌ河岸を歩いたのはもう深夜。見ればルーブル美術館の建物。その広大さに驚く。正面からルーブルの入り口あたりを見、振り返れば直線上に凱旋門。と、突然、ライトアップされていた明かりが消える。午前二時。いや、午前二時三分。このあたりの微妙ないいかげんさがパリらしかった。
■いろいろあったパリの刺激に疲れた。マダガスカルもそうだったが、やっぱり長く滞在したい。

(5:34 may.29 2002)


May.27  「帰ってきた」

■朝8時過ぎ関西空港に到着。
■無事にもどってまいりました。
■僕が20日、フランスへ向かうため関西空港に着いた直前、サッカーのフランス代表が同じ空港にフランスから到着したことをパリで知った。何の因果でしょう。入れ替わるようにわたしはパリへ。このさいだからフランス代表を応援しようかと思った。

■フランスでの、というかパリでの一週間は想像をはるかに越えた刺激的な時間だった。毎日フランス語の芝居を見ていたのも驚くが、そもそも舞台を5日間連続して観るのも僕にしたらめったにない経験であってしかもフランス語。なかでも、ジャン・ジュネの『屏風』は四時間の上演。字幕もないのに四時間。さらにパリ最後の夜にはオデオン座で『ダンカンの死』を観たがこれはもう劇場がすごい。映画をはじめこうしたヨーロッパの劇場を映像で見ることはあっても実際に見るのはまたべつの感慨である。あとポンピドゥーセンターで見た「革命とシュールリアリスム展」の話やパリの地下鉄、町のいたるところにあるカフェ、パリで行方不明になった劇作家松田正隆、ユーロの前で小学生なみの計算さえできなくなったガジラの鐘下辰男、一泊二日で日本に帰っていった第三エロチカの川村毅など書きたいことはいくらでもあるが、それはすべて「パリノート」にまとめることとし、今週中に作る。

■簡単にまとめると、「パリ、演劇と美術の日々」でした。
■ノートルダム寺院、ルーブル、エッフェエル塔だの、可能な限り観光地には近寄らないようにし、なぜかよくわからないがポンピドゥーセンターには三日連続して行った。とはいえついついサルトルとボーボワールがよくいたというサンジェルマンにあるカフェ・ドゥマゴには行ってしまった。コーヒーも飲んだ。本屋にも入った。犬の写真も撮った。地下鉄にも乗った。
■コンピュータを持ってゆくべきだと後悔したがもう遅い。
■ 11時間の飛行機は疲れる。
■京都に戻って少し眠り、お腹がすいたので蕎麦屋に入る。せいろがうまい。パリもいいけどそばもうまい。

(0:57 may.28 2002)


May.19  「お休みのお知らせ」

■20日からフランスです。「京都その観光と生活」はしばらくお休み。おそらく27日の夜には再開しているでしょう。PowerBookを持ってゆくのが重量的にしんどいというのが最大の理由。フランスにまで行って肩がこるのはいやだよ俺は。再開するのと同時に、別ページとして「フランスノート」を作ります。乞期待。

(0:00 may.20 2002)


May.18  「茫然とする日」
■東京である。
■原稿は書けない。書けない。夕方、獣医へ。注射をする。猫は眠る。ぐっすり眠る。いつまでたっても目を覚ます様子がない。それで茫然とした。
■仕事にならないのであきらめた。
■このノートはあした書けるかわからない。となると、しばらくお休み。なにかのきっかけで書けるかもしれないが、わからない。27日には帰国。その日は「フランスノート」をたっぷり書こう。

(3:18 may.19 2002)


May.17  「中山だ」

■午前中は一年生の舞台基礎。Bクラス。このクラスはどんどん面白くなっていった。で、来週はフランスに行っているので休講になりこれがこのクラスの最後の授業。映像コースのK君がもっとやりたかったと言ってくれたのはうれしかった。テキストを読む課題の時、オペラ『魔王』を走りながら読んだ学生だ。こういう映像コースの学生が、からだで表現するのも面白いと思ってくれたらこの授業は成功だ。
■午後、二年生中心の「舞台表現」。テキストをひたすら読む。リーディング形式で椅子を並べ、台本を手に読む。読む。読む。少しずつ動きを取り入れてゆき、まあリーディングの一般公開は「読む」のが主眼だが、動きがあってもいいし、それも演出。アイデアもある。授業が終わってから、僕が来週一週間不在するのでいまのうちにスタッフ関連の仕事で疑問があったら質問してくれと言ったら次々と押しよせる。次々と質問に答える。質問に答えるのが仕事だ。

■午後七時過ぎの新幹線で東京に戻る。
■サッカー日本代表に中山が選ばれていたことを知る。うれしかった。雑誌「ユリイカ」サッカー特集に原稿を書いた。この何試合かずっとディフェンスとして出場している宮本、中田、松田のフラットスリーのことを三人とも顔が甘すぎるのではないかもっと「ごつく」「こわく」なくちゃディフェンスとしてだめだと書き、エスパルスの森岡とアントラーズの秋田の顔の「ディフェンスらしいこわさ」を例に出した。その二人が選ばれたのもうれしかった。なにやら奇妙な予感が当たったような気分だ。森岡はともかく、秋田が選ばれるとは思っていなかった。
■で、キヨスクで新書版のサッカーに関する本を買い、東京に向かう新幹線のなかで読んだ。ほぼ読み終えたころふと顔を上げると窓の外は東京だった。

■猫に会う。あしたお別れ。

(2:56 may.18 2002)


May.16  「授業など」

■学校までTREKに乗ってゆく。快調。というのもバスの時間にわずらわされずに家に戻り仕事をしたいと思ったからだ。自転車だったらどんな時間でも帰ることができる。
■午前中は「舞台表現」の授業。今週はあわただしくてどうも落ち着かないが、studio21を使った授業は集中できた。studio21はいい。で、ひたすら上演台本を読む。まだ読むことが足りない。リーディングは、それを公演するという「目的」ではなく、授業での読むことの稽古の「結果」であればいいと思う。
■京都は北に向かって上り坂。つまり、帰りは坂をずっと下ってゆくことになる。帰りはいよいよ快調。自転車がすごく気持ちがいい。白川通りを走り御蔭通で曲がる、途中、京大の農学部の中を通って進々堂のある通りに出るとそれからどう走ったか忘れたが、府立図書館まで行って原稿の資料を借りることにする。だけど現住所を証明するものがないと貸してくれないとのこと。 これからちょくちょく利用しようと思っていた矢先だったのでがっかりだ。しかもきょう借りようと思ったのは今すぐ必要な資料だ。すぐそばにある公園で休憩する。図書館は近代美術館の隣。曇り空だが気持ちがよかった。
■家に戻ってすぐに原稿を書く。
■少し寝不足だ。洗濯もする。片づけもする。フォークナーも読む。原稿を書く。

(22:56 may.16 2002)


May.15  「原稿を死にものぐるいで書いている」

■もうだめらしい。少し前まで「もう少しがんばろうよ」と言っていた獣医師が、「ここまでよくがんばったんだから、そろそろ楽にさせてやったほうがいいかもしれないな」と言ったという。
■以前も書いた、「くつ」という名前の猫のことだ。
■右目の裏側にできた腫瘍のために、右目は押し出され、その影響か、左目の神経も冒され全盲になっていた。口の内部から出血。鼻も腫瘍で麻痺し臭覚もほとんどきかないので、猫としてほとんど感覚を奪われたような状態で一ヶ月近く生きていた。ただ声を掛けるとまだこちらの存在に気がつく。すべての飼い猫がそうであるように、名前を呼ぶと返事をするかのようにしっぽを動かす。きのうから容態が急変。呼吸困難に陥った。ひどく苦しそうだという。
■急遽、死を看取ってやろうと思い、金曜日の夜に東京に戻ることにした。土曜日に安楽死させる。そして日曜日にまた京都。そして月曜の朝、関西空港からフランスに行く。
■そのために原稿を書いた。死にものぐるいで、『一冊の本』『ガルヴィ』『考える人』の原稿は書き上げた。あとは、『小説トリッパー』の原稿15枚。岩崎書店の絵本の原稿があるが、これは無理かもしれない、というか絵本は、もっと落ち着いた気分で書きたいのだ。

■少し疲れたが、またあしたは朝から授業だ。
■猫のことといってしまえばそれまでだが、「死」に対してはどうしても無力だ。なにもできないことが歯がゆい。フランスに行かないと俺まずいのかなあと思いつつ、タイミングの悪さがいやになる。もうこれ以上苦しませたくはない。苦しんだまま生き続けるほうが猫にとっては不幸ではないか。生きのびさせようとするのは人間の勝手なのだろう。

(0:20 may.16 2002)


May.14  「またせっぱつまる」

■二年生が中心の「舞台表現」の授業だがいきなり七月の発表公演の前に「リーディング」をやりたくなったのだった。とにかく読む。戯曲を読む。読み合わせとはまた異なる意識で上演台本を読む。それをとことんやりたいのが主たる趣旨だがまあ「発表」があると学生もがぜんやる気になるのではないだろうか。椅子があればいい。あかりはただついていればいい。スタッフも一つ目のステップとしてリーディングがいい経験になると思う。
■で、六月の六、七日あたりにそれができればと構想している。どうなるかまだ学科としての結論が出ていないというか、ああ、ほとんど学生にしか話してなかった。

■フランスに住んでもう12年というリヨンのYさんからメールをいただいた。
 20日に日本を発たれるそうですから、20日にフランスに到着なさるわけですね。この日は祝日です。パリなら大丈夫だとは思いますが、一般には店もレストランも閉まりますから、そのつもりでいらしたほうがいいです。
 フランスからのサイト更新がないのは残念です。重すぎるなら仕方ないですね。時間があれば、リヨンにもお立ち寄りください。ちょっと京都みたいな町だと思います。
 うーん、そうかリヨンか。どこにあるのだろう。フランスのことはなにも知らない。リヨンにも行けたらいいが仕事だから時間がとれるのかよくわからない。考えてみたらいろいろわからないことだらけだ。フランスの通貨はやっぱりユーロなのだろうか。いまのパリの気候はどうなんだろう。どういった服を持ってゆけばいいかわからない。このところニュースを見ていなかったので、中国の事件のこともきょう知ったくらいで、フランスであったこのあいだの選挙はどうなったんだ。あの民族主義者はどういうことになっているのか。

■新潮社のN君からもメール。『考える人』という新創刊される雑誌の連載エッセイの締めきりもやっぱりフランスに行く前だ。たいへんなことになった。きょう書評の依頼FAXが来ていたがさすがに断った。『考える人』のエッセイのタイトルは、「考えない」だ。「いかに考えないか」について書くことになるだろう。たとえばそれはおそらく、「人は油断しているとついつい考えてしまうものである」とはじまるはずだ。で、連載の途中でなにを書こうとしていたか忘れるというのはどうか。考えないんだからしょうがないじゃないか。
■原稿を書く。そのあいまにフランス行きの準備。サッカーも見てしまったけれど。

(6:25 may.15 2002)


May.13  「ウェブログについて」

■おどろくべきことに、私がいまこうして書いているのは、「ウェブログ」というものなのかもしれない。とはいうものの、「ウェブログ」をはっきり理解したわけではなく、いまリンクしたHOTWIREDの記事の文脈では「日記」であることに中心がおかれている印象を受けるが、べつの記事では、「コメントの付された日付のあるリンク集」という姿がイメージできる。どうなんだろう。
■いずれにしても名付けられた途端、「書かれたもの」に意味が付され、単に「日記の形式をしたネット上における表現」でしかないと考えていたものがべつの姿になって出現する。名前とはそのようなもの。記号とはそうしたもの。同時に、「ウェブログを書いている」ことによって、やわな文章は決して書けなくなる思いがし、「ウェブログ」は、というか、「名前」「記号」は、書く者を緊張させもするしあるいは自分の書いた文章を「ウェブログ」として読み返すことにもなってそこに「書くこと」への反省も生まれるのだとすればリンクしたHOTWIREDの記事にある「可能性」の姿もおぼろげながら見えてくる。
■いわば、「ウェブログの書き手」、あるいは「ウェブログライター」としての自覚である。
■これは「雑誌に原稿を書くこと」「小説を書くこと」「戯曲を書くこと」とはまったく異なる意識の発芽であって以前引用した、翻訳家のNさんのサイトにあった「だれもができる範囲で誰かの役に立ちそうな情報を流す、というのがインターネットの根本精神だろうと思います。世の中の動きは逆に情報に値段をつけ、管理しようという方向にどんどん向かっているようなので、とりあえずなんか抵抗しなくては」という言葉がよりいっそう響くのだ。
■とはいっても、むつかしいことではないと思う。誰もが自分の興味や専門の分野について「日付のある文章」を書けば「誰かの役に立ちそうな情報」は生まれるのではないか。このあいだ書いたが、日本から持ち込んだコンピュータを使ってフランスでインターネットに接続するにはどうしたらいいか、実際にそれを体験したことのある個人の方のサイト、「F2K(フランス通信環境問題)」「海外通信マニュアル」がどれだけ役にたったかしれない。あるいは演劇。ほかにも、音楽、文学、映画、思想、政治、経済、庭仕事、日々の仕事、コンピュータ、などなど……、ジャンルはなんでもいいはずだ。ただ基本的に、情報を共有するという意味で「うまいリンク」の付け方は文章を書くのとはべつの技術になるのではないか。どうやらそのためのソフトが、アドビのGoLiveやマクロメディアのDreamweaverのような、つまりWYSIWYGエディタとはべつに用意されているらしい。
■だがまだわからない。
■ウェブログとはなんだ。正しい定義はないのか。ためしにGoogleで「ウェブログ」を検索したが、無数に結果ができてきたので調べるのをあきらめた。ずいぶん以前からこの言葉は使われているようだ。単に一般化されていないだけのことだろうか。で、偶然見つけたこんなサイトこそ正しいウェブログのあり方にちがいない。

■ところで、フランスからのサイト更新はあきらめた。いろいろ事情はあるけどなにより機器類の「重量」に負けたのである。いやだよ重量は。

(0:08 may.14 2002)


May.12  「新日曜美術館」

■京都も日曜日である。
■河原町まで本を買いにゆくと人が多くて歩くのに少し困る。

■それにしてもかつてNHKの「日曜美術館」てやつはひどくつまらない番組だったが、いつのまにかタイトルも「新日曜美術館」になっておりこのところやけに面白い。今回は「吉田初三郎」を取り上げていた。吉田初三郎という名前ははじめて聞いた。大正から昭和にかけて観光地を紹介する鳥瞰図を描いていた人だ。見たことが誰でもあるはずの空の上から観光地を見たような絵たち。当時の「観光地鳥瞰図」はほとんど初三郎の手になるものらしい。調べたらきょうまで秋葉原の電気街にほど近い交通博物館で「絵地図でたどる鉄道の旅 沿線案内図への招待」という展覧会が開かれ初三郎の作品も展示されていたようだ。
■番組ではパンフレット状になって当時配布されたのだろう「観光鳥瞰図」がいくつも紹介されたがなかでも面白かったのは知多半島のもの。なにしろ、知多半島周辺はむろんのこと、富士山も見えるし、ハワイも、ウラジオストックも見える。正確に描かれているような細密さだが、大胆なデフォルメがところどころにほどこされており、見せたい部分がやけに大きくなっている。なによりきれいなのがいい。盛岡の美術館に所蔵されているという原画はかなり大きなサイズで畳三枚以上はある。テレビの画像を通じて目にしただけだが見事な作品だった。
■そもそも地図が好きな人間にはたまらない魅力だ。番組のゲストに荒俣宏さんが来ていた。荒俣さんが個人的にコレクションしている初三郎が描いたパンフレットもいくつか紹介され、なかに東京の京王線沿線案内図があってそれがすごくほしかった。駅周辺の紹介はもちろんだが富士山も描かれている。そんなに大きく見えないだろうというくらいの富士山だ。関西では京阪のがあったな。おそらく阪急も阪神もあるんだろう。もちろん京都の観光案内もあった。
■荒俣さんの目のつけどころはつくづくすごい。
■で、「観光案内図」というか、「観光案内鳥瞰図」について、かつて読んだ「地図に関する本」に詳しく論じられていたが手元にない。その本ではそうした鳥瞰図をある種の曼陀羅として紹介していたのではなかったか。手元にないのが残念だ。やっぱり地図だよな。地図はいいよ。そして「観光案内鳥瞰図」の魅力をあらためて知ったのだ。

■そうだ、時間を見つけて兵庫県立美術館にゆこうと思っていたのだった。だが、あしたは月曜。休館日。また月曜かよ。

(2:57 may.13 2002)


May.11  「修学旅行みたいなドライブ」

■原稿に苦しむ一日。
■すると夜遅くなってから学生のDとYが原稿に苦しんでいるのをねぎらいに差し入れを持ってクルマで来た。Dが乗っているのはレガシィ。あるときそれを知って、おそらくレガシィに乗るのはばかものだろうとYに話したことがあった。レガシィはすごく売れているクルマだそうだ。するとYは言った。「世の中、ばかが多いっていうことですかね」。笑ったなあ。怒られるな、レガシィファンとD君に。
■気晴らしにレガシィを運転させてもらって夜の京都を走った。わたしもばかものである。Dが言うとおりスピードの出るクルマだ。ぐいっと走り出す。烏丸通りをまっすぐ走り京都駅への方向に行くと途中、五条を曲がって堀川通りを左折。西本願寺が右手に見える。それでまっすぐゆけば東寺に向かうのだがなぜか左折。気がついたら京都駅の前だ。線路を越え、九条を西に進むと東寺。東寺の五重の塔がライトアップされている。京都といえばこの風景。絵はがきみたいな光景が目の前にある。
■千本通りをまっすぐ走り丸太町通りを右へ。堀川に出ればあとはうちに向かう。右手に二条城。まったく修学旅行みたいなドライブだ。

■それからまた原稿に戻る。朝までかかってようやくユリイカの原稿を書いた。フランスに行くまでに連載を全部書いておこうと思う。第一の難関を突破。次は、『機械』を読む連載。どこまでも仕事はつづく。

(7:01 may.12 2002)


May.10  「おいしい一本のタバコ」

■京都は一日中、雨。
■朝から一年生の授業がある。「声・テキストを読む」の二回目。前回自分が選んだテキストを読んでもらったがそれを自分の好きな場所で読むという課題の発表。やけに面白かった。まずロケーションの選択がそれぞれ工夫されていたのがなによりよく、うちの大学は山の上まで続いているがそのてっぺんあたりの楽心荘という建物の中の茶室だの、人間館のラウンジ(学生のたまり場)でブルーシートのなかに全員が入った状態で読むだの、エレベーターの中、研究室の僕の机の下、一番面白かったのは走りながらオペラの「魔王」の詩を読んだ学生の発表。みんな熱心だった。すっかり暗記してきた者もいて感心した。
■山を登ったり、駐車場まで行ったり、大学前の道路、研究室のある建物と、移動が多くて足は疲れ息は切れたが面白かったのでなんてこともない。すごくよかった。

■午後、舞台表現の授業。受講者が多いので、A・Bのダブルキャストの公演になる。前回、新しく作った上演台本をAグループが読んだので、今回はB班と思っていたが学生からの提案でスタッフ会議をやる。スタッフとしてどう動いたらいいかわからないし、スタッフもグループわけしたが役割の分担をしたいと前回の授業終了後、研究室まで学生が来て提案していったのだった。その自主性というか、自覚に驚いた。去年はまだ「授業内における発表」の経験が誰にもなかったので、なにをしていいかわからずはじめたが、去年の経験をふまえ、学生たち自ら考えていることに驚かされる。
■少しずつ、授業の体制が整備されてきたのだと思う。
■舞台は特殊な学科だから面倒なことも多いが、なにごとも経験。去年は闇雲だった。今年は少しわかってきて作業もスムーズに進んでゆきそうである。

■その後、タバコの本数は横這い。減らない。
■一日中学校にいてほとんどタバコを吸わなかったが、授業を終えて帰るときバス停で吸ったタバコがすごくおいしかった。

(2:11 may.11 2002)


May.9  「赤面しない技術」

■仕事を引き受けすぎた。いろいろ原稿がたまる。
■以前も、WebについてメールをいただいたYさんからWindows98がプリンターを認識しないと「東京模様」に書いた件で丁寧なアドバイスをしていただいた。でも、もう京都なのだった。プリンターが認識しないのは東京だ。向こうに戻ったらアドバイスを元に試してみよう。ほかにも、岩崎書店のHさんからメール。しまった。絵本の原作の締め切りが過ぎている。筑摩書房の打越さんからは単行本の件。だめだ。あと、朝日新聞のOさんから頼まれた「手紙」に関する原稿があったはずだ。連載の締め切りもまた来るだろう。
■午前中の授業を終え、帰りのバスに乗っていたら突然、妙なウツに陥った。またよくわからない不安感である。しょうがないので家に戻って二時間ほど眠る。それで回復。
■池袋サーチエンジンシステムクラッシュツアーにも参加したコピーライターのO君のメールで、京都の「自転車タクシー」について教えてもらった。どうやらいま住んでいる近くを走るらしい。一度乗ってみなければなるまい。
■大学で文学を教えているある批評家によれば、学生に小説を書かせたとき、それを朗読させるという。ここで批評家は、「魂の叫び」という言葉を使ってある種類の小説を批判的に対象化するが、「魂の叫び」な小説を声に出して読み、しかもほかの学生らの前で読むと書いた本人が赤面するという。よくわかる。批評家の意見に全面的に賛成だし、声に出したらちょっとどうなのかと思うような言葉、なかでも「せりふ」の書かれた小説は数多い。ところが、「演劇」はもっと特殊である。「演劇」においては、「声に出して読むと赤面するようなせりふ」を堂々と読むことが「技法化」されているのじゃないかと思うことがしばしばだからだ。「赤面しない技術」だ。これをどう考えたらいいかよくわからない。どうやってそのこと、「恥ずかしい」ということをわからせたらいいのだろう。
■じっくり考えたいがとりあえず原稿を書く。

(23:29 may.9 2002)


May.8  「原稿を書いている」

■一日中、原稿を書いていた。授業のない日だからどこかに行きたかったが、原稿がどうも書けない。夕方、外に出ると近くに町屋を改造して作られた新しい店を見つけた。バリ島の民芸品をならべている。木を掘って作った動物の人形や、食器、ほかに衣類もある。動物の人形を買おうかと思ったがなにも買わずに外へ。少しぶらぶらする。夕方の京都の町もいい。食事をして部屋に戻るとテレビでは阪神とヤクルトの試合を中継している。やっぱり関西である。
■あと、PowerMac G4を買うと、内蔵のHDDのほかに、80ギガのHDDとEGWORD PURE 7.0というワープロソフトが付いてくるキャンペーンをアップルがはじめたらしい。期間は6月30日まで。ってそれ、7月になると新しいPowerMacが出るので、在庫を整理しますと報告しているようなものだよ。もしかするとG5になるのかもしれない。
■そんなことより原稿を書こう。

(1:12 may.9 2002)


May.7  「フランスと重量」

■昨夜、京都に戻った。

和菓子屋(二条)

 部屋の片づけ、風呂などに入って気がつくと午前二時半。五時間の睡眠で朝から授業。一年生の舞台基礎だ。やけに京都は冷える。Tシャツの上に薄いシャツだけじゃ寒かった。午後になって家に戻るころやけに眠くなる。大学の芸術文化学科で教えていらっしゃる小林さんから大阪市立大学で開催されるシンポジュウムへの参加を依頼されていた。返事をメールで送る。それで眠ることにした。

■眼が覚めると夜。外は雨だった。サッカーを観ようと思うがそれまでずいぶん時間がある。本を読み、ものを書き、テレビでニュースを見、ネットで調べものをし、ぼんやり考えながら時間をつぶす。
■ネットで調べていたのはフランスからどうやってサイトの更新をするか。
■20日に日本を発つ。向こうから「フランスノート」を書きたいと思っているのだ。電源の変換コネクタ、電話回線の変換コネクタが必要らしいことはわかった。あとは使っているリムネットのフランスでの接続先に繋がればいい。リムのサイトは説明が不親切だ。外国から接続した経験を書いてくれる人たちの個人サイトのほうがずっと役にたつ。ありがたい。
■まあ、調べればなんとかなるものはいい。問題は重量である。デジカメや、ノート型コンピュータを運ぶことの苦労。重くなるだろう。肩がこるだろう。考えると憂鬱になる。それでもやってみたいのがフランスからのノートの更新だ。外からこの国を見る。それを記録したい。楽しみである。

(7:04 may.8 2002)



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