Jun.30

■朝、ペリカン便に起こされる。Yahoo!オークションで買った本だった。で、眠れなくなったので仕方がないから来週分の朝日の原稿を書く。締め切りが来た小学館の古典文学全集の月報も書くことにしたが、そんなことをしていると小説が書けない。引き受けなきゃよかったと少し後悔した。さらにゲラのチェックなど次々と仕事を片づけたのは、あした実家に一時的に戻る必要があるからだ。小説はようやく315枚。中断したくはないのだが。
■そういえば、劇作家協会が出している「ト書き」という雑誌で、筒井康隆さんが僕の小説のこと、三島賞の選考過程などを書いてくださった。実はそれ、少し前に届いたのだが雑誌自体を開いておらず、気がつかなかった。気がついたのはその編集部から、筒井さんの書かれた文章のなかの僕の名前の表記が間違っているとお詫びの手紙をいただいたからだ。編集部の校正ミス。気がつかなかったかもしれない。手紙をもらわなければ。暑い一日。
(23:37 Jun.30 2000)

Jun.29

■早川書房のM君から『からだことば』という本が届く。NOTEのページを読んでいてくれて、最近、作ったという身体論の本を送ってくれたようだ。ありがたい。M君と本を作ろうともうずいぶん前から話していたが、僕がぐずぐずしているうちにM君は会社をやめるそうだ。申し訳ない気持ちである。午後、建築家の長谷川逸子さんに会う。袋井の話を引き受けてしまった。小説が書けなくなるのではないかとそれが気がかりだが、面白そうだからやる。
(0:07 Jun.30 2000)

Jun.28

■小説を書いていた。やけに進む。こんなに書けていいのか疑わしい。なにか間違っているのではないか。文章が雑になっていないか。とりあえず、今週中には全体の三分の二まで書くのが目標だ。
(0:00 Jun.29 2000)

Jun.27

■建築家の長谷川逸子さんの事務所の方から手紙がある。静岡県袋井市に長谷川さんが設計された文化施設があってワークショップをやらないかという内容。えらいな、袋井市。立派なものだ。隣の掛川市は城を建てた。ばかではないのか。文化と観光。市民にとってはどちらがいいのか。とはいえ、袋井市にはワールドカップに向けてサッカー場も建設されている。あれはどうなんでしょうか。
(1:13 Jun.28 2000)

Jun.26

■この国は六四〇兆円だかの負債を抱えている。単純に計算すると、国民一人あたり五百万円は借金があるということで、四人家族なら二千万円。そうやって考えてゆくと途端に話が具体的になるから不思議だ。で、みんなせっせと利息を払っている。数字もさることながら、選挙の報道など見ていると、「村社会」がつくづくいやになる。政治だけの問題ではなく、というか、政治が社会のすみずみまで浸透し、あらゆる「もの」や「こと」を形成しているかと思うとひどく無力感に襲われる。表現者としてどんな戦略が有効なのかわからない。
(1:37 Jun.27 2000)

Jun.25

■昼間、投票に行く。それ以外は小説を書いて一日が過ぎてゆく。
(23:21 Jun.25 2000)

Jun.24

■ずっと小説を書いていたが煮詰まる。細かいことばかりにこだわり、頭がぐらぐらしてきた。金沢にある十月社から注文した本が届く。カレル・チヤペックの『R.U.R』という戯曲。とてもいい本だ。
(3:07 Jun.25 2000)

Jun.23

■雨が降っていたからというわけでもないが、一歩も外に出なかった。ずっと小説を書く。やけに進む。それでもまだ半分。さすがに五百枚の小説は長い。人から教えられたが、Yahoo!のオークションに「タイムマシン」が出ているという。話題沸騰らしい。いくら接続しようとしてもつながらず詳細がわからない。どういうことだ、いったい。
(1:37 Jun.24 2000)

Jun.22

■毎日新聞、NHK、実業之日本社と、三人の方に連続して会いひどく疲れた。七月から毎日新聞の夕刊で連載。NHKでは『茫然とする技術』をアナウンサーが朗読する番組。『実業の日本』という雑誌は来年からリニューアルするそうで、連載を依頼される。『資本論を読む』というものすごい連載を提案。実業之日本社の人は二日前の日記を誤解していた。自民党が安定多数という情勢だから景気が安定したと読んだらしい。「この時期」に、「景気が上向きという報告」がうそくさいという意味である。ある本が欲しくて金沢の十月社という出版社に電話で注文。とても気持ちのいい応対でいっぺんに好きになった。
(23:33 Jun.22 2000)

Jun.21

■風がないせいか、仕事場はひどく暑い。午後、自転車でそこらをぶらぶらする。梅ヶ丘から明大前、下高井を通り、さらに経堂を廻って帰ってきた。生前の中上健次が新宮で開いた公開講座などを収めた、『熊野』を買う。あとは小説の仕事。
(22:23 Jun.21 2000)

Jun.20

■月刊アスキーの原稿をようやく書き上げる。ちょっと気持ちが落ち着き、小説の続きを書く。この国がこれほどだめに向かって突き進んでいるのに、自民党が安定多数をうかがうという情勢。タイミングよく景気は上向きとの経済企画庁の報告。どこまでも笑わせやがるよ、この国は。
(0:29 Jun.21 2000)

Jun.19

■松沢呉一さんがインターネット上で公開している文章を読んだ。すごく面白い。だけど、長い。どうしてこんなに書いてしまうのだろう。この過剰さはなんだ。
(2:26 Jun.20 2000)

Jun.18

■日曜日の下北沢は人が多い。買い物をする。そのまま自転車で羽根木公園に行き、グランドでやっている草野球の試合を見たのだった。野球が好きな人がこんなにいるのかと驚く。
(5:47 Jun.19 2000)

Jun.17

■朝、やけに早く目が覚めてしまったので、iモード版、PAPERSを作った。とりあえず、http://www.u-ench.com/i/がURLだ。まだ試作段階だが、iモードを使える人はとりあえず接続。身近にiモードしか使えない人がいたらURLを教えてあげよう。夜、桜井圭介君が神楽坂のセッションハウスでやっているワークショップの発表会がある。『神楽坂ダンシングオールナイト』。これまで、桜井君の理論をもとにいろいろな形でやったダンスの中では、これが一番、気持ちがよかった。無理のなさということだろうか。いとうせいこう君がいたせいもあるが、最近では珍しくやけに話しをした。ふだんあまり人と会わないのだから、人と会えば話す。楽しい一夜だった。
(0:48 Jun.18 2000)

Jun.16

■京都から帰ってきた。大学の授業をいくつか見学。面白かった。途中、べつの授業に出ようとして教室がわからずうろうろする。仕方がないので古本屋に入って買い物。脈絡がない。レジにあった京都古本屋マップのようなものを手にし、「これ、いただけるんですか」と質問したら、間髪入れず、「千二百円」と言われた。これがすごくいい。京都生活において必携である。夕方、学科会議。あと、大学が名刺を作ってくれた。人生ではじめて名刺を手にしたのだった。
(0:28 Jun.17 2000)

Jun.14

■ほぼなにもしないで一日が過ぎたのは、目が不調だからだ。どうもかすむ。携帯の設定などしていると小さな字を見るわけだがこれがよくない。あと設定するのにいくつかのボタンを押すが、連続して素早く押す必要があり、のろのろしていると設定できないのはどういう仕組みなんだ。でも、ノキアのこれはデザインがいいので許す。またふたつばかり仕事を断る。10月以降にしてくださいとお願いする。10月以降、僕は京都だが、この時代、距離は関係ないのであった。
(0:02 Jun.15 2000)

Jun.13

■『一冊の本』の原稿を書く。あとは小説。PAPERSの18号にリンクが切れている部分があるとメールをもらったので調べようとしたが、夜、u-ench.comがやたら重い。つながらない。で、突然だが、ノキアの携帯電話に買い換える。iモードってやつなので、PAPERSにもiモード対応のページを作ろうかと思う。PAPERSが中断してから丸一年になろうとしているのだった。
(1:54 Jun.14 2000)

Jun.12

■一日中、小説を書く。全体の三分の一は書けたが、プリントアウトして読み直すと、どうも文章が気になる。そうやって気にしていると先に進まないので細かいことは後回しにしよう。経堂のだめになったパン屋はどこですかというメールをもらった。それで思い出したが、梅ヶ丘の、とあるラーメン屋もだめになった。いま世田谷周辺にだめが蔓延しているらしい。
(1:07 Jun.13 2000)

Jun.11

■ずっと小説を書いていたが、夕方、散歩に出る。豪徳寺からぐるっと経堂まで歩いた。驚いたのは、経堂駅の高架工事がほぼ完了していたことで、駅前の踏切がなくなっていた。電車の通過を待っていらいらしなくてもいい。あと、経堂で一番おいしいと思っていたパン屋がだめになっていた。
(1:45 Jun.12 2000)

Jun.10

■まだ枚数は少ないものの、なんとなく小説の形が整ってきた。一作目は勢いで書いたが今回は書きながら学ぶという感じの作業。やけに丹念に書いている。で、ふと、「コンピュータで書くということ」と、「書く道具としてのコンピュータ」はちがうと考えた。以前、やっていた作業は、それを混同していたような気がする。
(1:28 Jun.11 2000)

Jun.9

■昼間、大学に電話をした。宅急便で送ったビデオが届いたか確認。で、来週の木曜日に京都に行くことにした。金曜に学科会議があるとのこと。あとは小説をこつこつ書く。
(1:33 Jun.10 2000)

Jun.8

■調子が出て小説がやけに進む。持続できればいいが、エッセイや書評の仕事があって中断してしまう。今週は、二つ仕事を断った。仕事はほどほどにしなければと思うし、だいたい芝居を休止した意味がない。
(23:32 Jun.8 2000)

Jun.7

■きのうに続き段ボールに入っているものを片づけた。何を調べようとしていたのかよくわからない資料が大量に見つかる。自己啓発セミナーについてはもうずいぶん以前から興味を持って調べていたらしい。小説も少しずつ書く。
(0:02 Jun.8 2000)

Jun.6

■夜、部屋の片づけをする。いくつもある段ボールを開けて整理する。様々なものが出てきた。むかしの原稿や、ラジカル時代の手書きの台本。どんどん捨てる。過去はもうどうでもいい。手紙類はもちろん残しておこうと思うが、なかでも、いとうせいこう君のFAX、さくらももこさんの手紙、いしかわじゅんさんの葉書、えのきどいちろう君のFAXなどが面白い。なにしろ四人とも名前がひらがなである。
(3:12 Jun.7 2000)

Jun.5

■夕方、京都の大学にビデオを送るため環7沿いにある宅急便の配送センターまで行く。帰り、羽根木公園に。梅ヶ丘側の公園入り口あたりは雑草におおわれた広場になっていて、整備されていないそのことがいい。しばらくぼんやりする。
(3:35 Jun.6 2000)

Jun.4

■ほとんど何もしなかった一日。こういう日があってもいいはずだが、なにかしてしまう。ひとまず今週分の朝日を書いたら京都に行かねばと思うのだった。
(0:25 Jun.5 2000)

Jun.3

■午後、早稲田に行って講演。作家の川上弘美さんといっしょだったが、川上さんはとてもきれいな方だった。講演にはかなりの人数が集まっていた。一時間ぐらい話す。話している途中、胃が痛くなる。終わってから早稲田文学の人たちとアフリカ料理を食べに行ったが、いきなりベリーダンスの人が出てきて踊ったのには驚かされた。
(4:08 Jun.4 2000)

Jun.2

■早稲田でやる講演のための原稿を書く。そうこうしているうちに、また家を出なかった。
(2:39 Jun.3 2000)

Jun.1

■永井がうちに来る。事務所のほうに来ている仕事の依頼の話など聞く。油断しているとつい仕事をしてしまう。筑摩書房から封書で、『明治の文学』のお知らせが来た。明治の文学者の作品を集めてシリーズで刊行される。坪内逍遙の解説を書かなくちゃいけないのだった。小説を書くひまがないじゃないか。で、夜、小説の資料にする本を脇に積み上げいつでも読めるようにしたが、かなりの高さになった。ゆらゆらして怖くてしょうがない。
(1:39 Jun.1 2000)