■朝晩、ずいぶん冷えてきた。東京からもらうメールにも同様のことが書かれているので、どうやら全国的に秋のようだ。朝日の原稿に苦しんだ。いまだこちらでは、仕事をする体制が不完全で、だいたい意識が観光気分なのがいけない。つい、観光客のような目で京都の町を見ている。午後、ようやく書き上げて朝日の原稿をメールで送る。夕方、ゲラがFAXで送られてきた。東京で原稿のやりとりをするのとほとんど変わりのない状態。全く世の中、距離はどんどん関係なくなってゆく。中上健次の『重力の都』再読。谷崎潤一郎の『春琴抄』があってはじめて成立している作品だが、京都に移り住んで新しい小説に取り組んだ谷崎のことを思い、あんなふうに書けたらと夢想するが、あまりに資質が異なるので僕には無理だろう。そう考えつつ、けれど、京都に移り住んだことでなにか作品に変化があるかもしれないとも思う。どこか古本屋を探して、谷崎潤一郎全集を買おうと考える。だが、書きかけの『28』を仕上げることがいま一番の仕事だ。そうは思いつつ、きょうもまた町を散策。バスで、陰陽家・安倍晴明を祀った晴明神社に行ったり、そこからさらに歩き、千本今出川にある、「静香」という喫茶店に行く。観光気分だ。またものすごく歩いて部屋まで戻る。疲れた。
●九月分
●世田谷日記
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