[2001年03月15日]


■ある映画の一場面、竹中直人、大杉漣、田口トモロオが、ならんで弁当を食べている場面に笑いそうになった。最近の日本映画にやたら三人が出現するのが面白く、出るんじゃないだろうなあと思うと、大杉さんなど、ちらっとタクシーの運転手で出現したりし、なんだろう、ヒッチコックの映画にヒッチコック自身がどこかにちらっと出るのを楽しむようなそんな感じ■竹中とは昔からあまり映画の趣味があわず、一緒に映画を見にゆき、劇場の前で、俺、あっち見るからといってべつべつの映画館に入ったことが何度かあった。だったら一緒に見にゆかなければいいじゃないか。俳優のなかで竹中ほどの映画好きはあまり知らない。ずいぶんまえ、ニューヨークでカードを使ってビデオを買いあさり、日本に帰って決済したら100万円になっていたという。わけがわからない。一時期、竹中はやたらカサベテスにいれこんでいたが、好きなんだなあこういったものがと思うのは岩松さんの劇に近いものを感じるからだろう■そういえば、トモロオ君に『七人の侍』のサントラを貸してそのままだ。10年以上前の話■このあいだテレビに『ユリイカ』の青山真治監督が出ていた。青山監督の映画の話が中心で、興味があってしばらく観ていたが、番組中、「日本映画ブーム」という言葉が出たので驚いた。たしかに都市圏ではミニシアターがにぎわい若い者らが日本映画をよく見ているし、外国の映画賞でも日本の若い監督の作品が健闘している。だからってブームという言葉はいかがなものか。「ブーム」には違和を感じる。「ブームはやめろよ」とも言いたい■三条にあるビデオ屋に入った。わりと地味なものも揃っている■エイゼンシュテインの『戦艦ポチョムキン』とタルコフスキーを借りようかと思ったのは、早稲田に講演にいったとき、文学部の先生と映画の話になったのを思いだしたからだ。タルコフスキーがやろうとしていたのがエイゼンシュテイン以来のモンタージュ論への批評だと先生が話していた。『戦艦ポチョムキン』を観たのは学生のころ。有名な階段のシーンしか覚えてないが、たまたま三条のビデオ屋にあったので観たくなった■ビデオはなんらかのテーマを決めて借りると面白い。「イラン映画特集」とか、「アキ・カウリスマキの映画に出てくるあの変な女優特集」「その後のヌーベルバーグ特集」「六〇年代サイケ特集」「ばかな子ども特集」「殿山泰司特集」「チェビー・チェイス爆笑特集」など。だから、「モンタージュ・反モンタージュ特集」だ。タルコフスキーの映画はたしかにモンタージュ的ではない。ものすごい長回し。太田省吾さんの演劇論につながるものを感じる■大島渚の『儀式』で、殿山泰司は葬式の場面にただ椅子に腰を下ろして出演していた。あれすごかったな。出したほうも出したほうだが、せりふもなく、ただ座っているのに画面に独特な空気が生まれる。大島渚の映画にはインテリな俳優ばかりが集められ、『悦楽』にやくざで出てくる江守徹と渡辺文雄がぜんぜんやくざらしくなくて笑ったが、殿山泰司は大島作品のなかでは特別な存在だ。殿山泰司が「俳優とは待つ仕事だ」とどこかに書いていた。たしかに映画は待つ。撮影の現場にゆくと照明を変えるだけでやたら時間がかかり、ワンカット、ひとことのせりふを撮るのに、照明を変えるだけで二時間なんてざらなんだろう。俳優は待つ。どんなふうに待っていたかが俳優を作るのかもしれない■

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