■洗濯をする。ずいぶんたまってしまって三回にわけた。気にいっていたTシャツにトマトソースとおぼしいしみがあるのに気がついた。いったいこれを着たのはいつだ。いつトマトソースなんか飛ばしたんだ。記憶がないのだ。町を歩いていて前から来る人がトマトソースを飛ばしているという状況はちょっと考えられないし■姉小路沿いにあるカフェで『青空の方法』のゲラチェックをする。まとめてやってしまおうと集中する。一心不乱だ。しかし、カフェというやつは照明が暗いとたいてい決まっているので眼が痛くなる。家で音楽を流すと仕事に集中できないが、こういう場所では気にならないのが奇妙だ。むしろ心地よい■夜、NHKのスポーツニュースを見ようとテレビをつけると柄本明さんが出ているドラマをやっていた■テレビドラマはまず見ないが、柄本明、樹木希林がものすごくうまいのでひきこまれた。はじめて柄本さんを舞台で見たのはもう20年以上前の渋谷ジアンジアン。すごい俳優がいることに驚かされた。それ以来のファン。だけど仕事を一緒にするのは怖くて敬遠していた■ある日、竹中直人の家に電話をすると、電話の向こう、遠くでけたたましい声、ひひゃひゃひゃひゃと笑っている人がいる。柄本さんだった■あれはなんの芝居だったか、下北沢ザ・スズナリのロビーで柄本さんと偶然一緒になった。簡単に挨拶をすると関わりになるのが怖くて僕は別の人と話をしていた。横に誰かが座ったのが気配でわかった。と、その人は突然、「最近、なんか面白い芝居ある?」と僕の後頭部あたりに声をかける。ゆっくり首を動かし、恐る恐る見ると、そこに柄本さんのあの顔があった。ほんとうに恐ろしかった■世田谷パブリックシアターで上演された、『ガリレオの生涯』『ゴドーを待ちながら』の柄本さんはすごかった。なにかで柄本さんは「役者は順番が来たらせりふを言えばいい」と発言していたが、自信を持ってそう言えるようになるまでに俳優は、どれだけのことをしておけばいいのだろう■仕事をしなければいけない。京都の時間も刻々と過ぎてゆく■
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