■なにか食べたら胃が気持ちが悪くなり液キャベを飲もうと思った。冷蔵庫の奥にある。手前にたまごがあって、割っちゃいけないと慎重に手を伸ばしたが、うっかり手が触れ、たまごが落ちて割れたのだった。やっちまったとすぐに片づける。殻を捨て、床に散乱した黄身と白身をティッシュで拭き取り、さらにぞうきんで水拭きする。やれやれ。それでべつのことをしていた。ふと液キャベのことを思い出した。気がつくと胃のことなんてもうどうでもよくなっているではないか。私はそのことで知ったのだった。胃が気持ち悪くなったらたまごを落とす■大学のオープンキャンパスの日である■はじめてこういうことを経験したが、学校に着いたのは午後1時過ぎ、なにやらにぎわっている。四月にオープンした人間館のラウンジには各学科ごとに机が並び、説明を受けに来たのだろう高校生らに、在校生が話をしている■学内にある劇場、studio21で高校生たちのためのワークショップをする。オープンキャンパスの一環だ。円になって床に腰を降ろし、自己紹介。三周する。自己紹介は五周ぐらいすると面白いということをある日発見したのだった。一周目はたいてい名前や住んでいるところで終わる。二周目になると、少し話が細かくなり、五周目にもなると、いよいよ話すことがなくなってどうでもいいことを話し出す。時間がないので三周にした■参加者は高校演劇をしている者らが多いようだ。すごい芝居だなあ。やっぱりわかりやすいことがいちばん価値があるのだろうなあ。だから、なにかしなくてはいけない。なにかしているとはじめて、「なにかしている」とわかってもらえる世界なのだろう。「なにもしない人の魅力」を見極めるのはむつかしいことだろうか■聞くところによると関西では高校演劇がさかんだという。詳しいことはよくわからないが、全体的に東京の高校生は醒めている気がする。醒めた人の目から見たら、「なにかしている人」は、切ない人に見えるだろう。そんなにがんばらなくてもいいんですよと、つい声をかけたくなるのではないか■しかし考えてみれば、オープンキャンパスって、無料でワークショップが受けられるというお得な内容ではないか。で、今回は高校生ばかりだったが、どこかで情報を聞きつけた大人が来てもおかしくないのではないか。妙だろうなあ、五〇歳代の人とかなぜか受けているオープンキャンパスのワークショップ。次の開催は八月一日から三日間だ。瓜生山に集まりたまえ■
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